ナレッジグラフは、さまざまなものと、それらを結ぶ意味のある関係によって知識を表現します。人、本、プロジェクト、アイデアがノードとなり、それらのつながりがエッジとなります。たとえば、マヤは『フィールドノート』を書きました。そして、『フィールドノート』は都市園芸について論じています。この3つのノードと、名前の付いた2つの関係が、小さなナレッジグラフを構成します。単に関連する言葉を並べたリストではありません。
シンプルな例:もの、つながり、問い
その架空の著者、本、トピックを記録した読書ノートを想像してみてください。情報を文章で書くことも、それぞれの関係を明示することもできます:
Maya → wrote → Field Notes
Field Notes → discusses → Urban Gardening
では、Mayaを起点につながりをたどってみましょう。彼女の本はどのトピックを扱っていますか?今度は都市園芸を起点にしてみましょう。どの本がこのトピックを扱っていて、それぞれ誰が書いたのでしょうか?
これが、ナレッジグラフの根底にある実用的な考え方です。何が何とどのようにつながっているかを保持することで、人やソフトウェアは散らばったテキストからつながりを再構成するのではなく、そのつながりをたどれるようになります。
「ナレッジ」という言葉が重要です。MayaとField Notesを結ぶ線だけでは、ほとんど何も伝わりません。その線にwroteというラベルを付けると、具体的な内容を伝えるようになります。ラベルをreviewedに変えれば、別の事実を示すことになります。
ナレッジグラフの構成要素
エンティティ:記述の対象となるもの
エンティティとは、ノードで表される特定のものや概念です。人物、組織、場所、イベント、文書、トピックなどが該当します。この例では、Mayaは人物、Field Notesは本、都市園芸はトピックです。
同一かどうかの判断は、表示名とは切り離して考えましょう。ノートブックにMayaという名前の人が2人いても、ラベルが一致するという理由だけで統合しないでください。一方で、「Maya」と「Maya — 著者」が同じ人物を指している場合もあります。どのレコードが同じ人物や事物を表しているかを判断することも、役立つグラフを構築する作業の一部です。
関係性:エンティティ同士のつながり
エッジはノード同士をつなぎます。エッジの種類は、その関係を表します。たとえば、wrote、works-for、depends-on、discussesなどです。
関係の向きも重要です。「MayaがField Notesを書いた」と「Field NotesがMayaを書いた」では、意味が異なります。声に出して文として読めるラベルを選びましょう。不自然な文は、モデルの曖昧さを示していることがよくあります。
プロパティ:対象やつながりの詳細情報
プロパティは、実体や関係についての情報を表します。ここで扱う架空の本なら、タイトルや読書状況を記録できます。Mayaなら、表示名を記録できます。
細かな情報はプロパティにするべきでしょうか、それとも別のノードにするべきでしょうか。初めてのプロジェクトでは、その情報にほかのものをつなげたいかどうかを考えてみてください。読書状況はプロパティのままでよいでしょう。一方、あるトピックを介して複数の本をつなげたいなら、そのトピックは独立したノードにするのが適しています。

トリプル:ステートメントを1つずつ
トリプルは、事実を主語–述語–目的語の形で表します。Maya → wrote → Field Notesの場合:
- 主語:Maya—文の起点となるエンティティです。
- 述語:書いた—文で述べられている関係です。
- 目的語:Field Notes—その関係の対象です。
トリプルは、モデルを理解するための簡潔な表現方法です。ノートアプリで作業する際、すべてのつながりをこの表記法で記述する必要はありません。名前を付けた関係でも、同じ基本的な考え方を表現できます。
開発者にとって、実装にはさまざまな方法があります。EsriはプロパティグラフとRDFグラフを区別しています。プロパティグラフではノードと関係にキーと値のペアからなるプロパティを付与し、RDFではトリプルでステートメントを表現します。「ナレッジグラフ」という言葉は、単一の格納形式を指定するものではありません。
スキーマとオントロジー:共通の語彙
スキーマは、モデルで使用するエンティティと関係の種類を定義します。私たちの読書用グラフでは、次のような種類を使用できるでしょう。
Person → wrote → Book
Book → discusses → Topic
オントロジーは意味を形式化し、型の間に追加の関係を定義することもあります。Graphwiseは、オントロジーを「意味に関する契約」と説明しています。これは、グラフの開発者と、ソフトウェアを含むその利用者との間の契約です。
小規模なノートなら、大規模で形式化されたモデルではなく、少数の用語から始めましょう。それぞれの関係が何を意味するのかを書き留めておきましょう。discussesは、本があるトピックをしっかり扱っていることを意味するのでしょうか。それとも、単に言及していることを意味するのでしょうか。一貫性を保つことで、できあがったつながりの意味を読み取れるようになります。
ナレッジグラフの事例:GoogleとWikidata
Google ナレッジグラフ
Googleのナレッジグラフは、検索結果にその情報が表示されるため、身近な例です。IBMの解説では、ユーザーの検索に応じて情報を提供するものと説明されており、情報源としてFreebase、Wikipedia、CIA World Factbookなどが挙げられています。
言葉と、その言葉が指す対象を区別することは有用です。IBMは、企業のAppleと果物のりんごを例に、スキーマ、同一性、文脈が意味の区別にどう役立つかを説明しています。検索システムが正しい対象についての情報を返すには、この区別が必要です。
Wikidata
Wikidataは、Wikipediaに関連するオープンなナレッジグラフです。執筆時点で、IBMの概要記事によると、300言語にわたる1億2,000万件以上の項目が収録されています。
個人のノートとは規模が大きく異なりますが、基本的な考え方はなじみのあるものです。対象について記述し、その記述同士をつなげます。トピックは単独の項目として役立つだけではありません。他の項目とのつながりが、それらの項目に文脈を与えます。
これらの例は、グラフで世界全体を表す必要があるという意味ではありません。1つの研究課題や1つのチームのプロジェクトを扱うグラフにも、同じ構成要素を使えます。
ナレッジグラフとデータベース・マインドマップ・ベクトルストアの比較
これらのツールには共通する部分もありますが、それぞれ異なる目的に合わせて情報を整理します。比較するうえで最も役立つのは、どのツールがどんな場合にも優れているかではなく、どんな問いに答えたいかという視点です。
| 手法 | 主な整理方法 | 質問例 | 主な違い |
|---|---|---|---|
| ナレッジグラフ | 種類が定義された関係でエンティティ同士をつなぎます | このトピックについて本を書いた著者は誰ですか? | つながりの意味を明確にします。 |
| リレーショナルデータベース | テーブル内のレコードをキーでつなぎます | 読書ステータスが「読了」の本はどれですか? | 構造化されたレコードを整理し、関係もクエリで検索できます。 |
| マインドマップ | トピックを中心に、アイデアを枝状に配置します | 私がガーデニングについて調べる際、どのような内容を扱うべきですか? | 再利用できる事実を定義するよりも、構成の整理やアイデア出しに役立ちます。 |
| ベクトルストア | 類似検索に数値表現を使います | この質問と意味が似ている文章はどれですか? | 類似性は、名称の付いた、事実に基づく関係とは異なります。 |
ナレッジグラフはデータベースの対極にあるものではありません
ナレッジグラフは、知識を表現したものを指します。データベースは、データを保存し、クエリを実行するための技術です。グラフデータベースは、相互につながるデータを中心に設計されており、ナレッジグラフを支えることができます。
リレーショナルデータベースも関係性を表現します。違いは「テーブルではもの同士をつなげられない」ということではなく、そのつながりをどのようにモデル化し、探索するかにあります。Esriは、グラフデータベースが、特に複数のつながりをたどる必要がある問いに対応する際に、明示的に保存された関係性を重視する点を強調しています。
読書状況をシンプルに一覧にするなら、テーブルだけで十分かもしれません。知りたいことが本から著者へ、著者からテーマへ、そしてまた別の本へと何度も移り変わるなら、グラフモデルを検討する価値があります。
マインドマップは概略を描き、ナレッジグラフは関係性を明示します
一般的なマインドマップは、中心となるアイデアから枝分かれしていきます。ナレッジグラフでは、関係の種類を使い分けて、枝をまたいでエンティティ同士をつなげられます。「自分の研究計画の一部」と「この人が書いたもの」を、区別のつかない線で表すべきではありません。
プロジェクトに含める概念をまだ検討している段階なら、まずは大まかな図を描くのがよいかもしれません。そうした計画づくりには、Notion用マインドマップ作成ツールが適しています。再利用できる関係性は、あとから定義できます。
ベクトル類似度と明示的な関係性は、それぞれ異なる問いに答えます
関連がありそうな文章を見つけることと、記録されたつながりを見つけることは別です。「都市園芸に似た内容のテキスト」と「『都市園芸』に明示的にリンクされた本」では、異なる結果が得られる場合があります。
両方のアプローチは併用できます。IBMは、グラフデータをベクトル化して検索に利用する、Wikidataに関連した実装を紹介しています。グラフは必ずしも類似度検索に取って代わる必要はなく、類似度検索がすべての関係性の意味を示してくれるわけでもありません。
ナレッジグラフは何に使われますか?
検索と質問への回答
ナレッジグラフを使うと、検索システムは単語だけでなく、エンティティや文脈も扱えるようになります。私たちが挙げた読書の例では、トピックから本、本から著者へとつながりをたどることで、「都市園芸について論じている著者は誰ですか?」という問いに答えられます。
おすすめ
IBMは、購買行動に基づく小売分野での商品レコメンドや、エンゲージメントに基づくエンターテインメント分野でのコンテンツレコメンドを支えるナレッジグラフについて説明しています。共通するのは、つながりのある情報を活用して、関連性の高い商品やコンテンツを見つけるという考え方です。
個人でのちょっとした活用例として、共通のトピックを通じたつながりを使って「次に読む本」リストを作ることができます。おすすめには納得できる理由があります。その未読の本が、すでに選んだ本に関連するトピックを扱っているからです。
データインテグレーション
同じ対象でも、情報源によって説明の仕方が異なることがあります。グラフを使えば、共通の識別情報と語彙を通じて、それらの説明をつなげられます。
研究メモに「Maya」、読書リストに「Maya — 著者」と書かれ、インタビューページでも同じ人物に言及しているとします。これらの記述が同じ人物を指していることを特定することで、本とインタビューが別々の記録のままではなく、1人の人物を介してつながります。
RAGとAI
検索拡張生成(RAG)は、検索で取得した文脈を言語モデルに与え、質問への回答を支援する手法です。グラフベースの検索では、明示的な関係を使って、その文脈を組み立てることができます。
Brian Curryのナレッジグラフガイドでは、関係をたどれることやつながりを追跡できることを、AIアプリケーションにとっての利点として紹介しています。当サイトのGraphRAGの解説では、この検索パターンをさらに詳しく説明しています。
個人のナレッジグラフ:ノートから始めましょう
個人用のナレッジグラフは、こうした考え方を自分のノート、プロジェクト、読書リスト、人物、概念に応用するものです。始めるのに、企業向けのデータパイプラインは必要ありません。
Notionのワークスペースには、すでにグラフ構造があります:
- ページはノードです。
- メンションとバックリンクは、参照を通じてページをつなぎます。
- データベース間のリレーションは、名前の付いたフィールドを通じてレコードをつなぎます。
- 親ページとの関係は、階層構造を表します。
これらのつながりが、すべて同じ意味を表すわけではありません。ページで本に言及していても、その本を推薦している、要約している、あるいはプロジェクトに活用しているとは限りません。つながりの意味を正確に示すには、Notionのデータベース間のリレーションに意味の伝わる名前を付けましょう。Notionのバックリンクを使って参照元をたどり、前後の文章を読んで、なぜ参照されているのかを理解しましょう。
Obsidianの保管庫では、ウィキリンクでノートをつなぎます。ここでも、情報をどうモデル化するかという同じ問いが当てはまります。リンクは単にどこかを指しているだけなのか、それともノートがその関係を説明しているのか、という問いです。NotionとObsidianの比較では、これらの環境のどちらを選ぶかについて、より幅広い観点から解説しています。
ここでは、リンクでつながったノートがグラフを形成するのに対し、厳密なナレッジグラフでは明示的で一貫した意味づけが加わる、という違いを押さえておくと役立ちます。まずは前者から始めて、後者を少しずつ強化していくことができます。

IVGraphは、Notionのページ、バックリンク、メンション、データベース間のリレーションを、操作できる3Dグラフとして表示し、既存のつながりを可視化します。執筆時点では、500ノードまで無料で利用でき、Notionへのサインインを通じて読み取り専用でアクセスします。
可視化は構造の確認に役立ちますが、リレーションが何を意味するかを定義する作業に代わるものではありません。ワークスペースを中心とした手順の解説については、Notionナレッジグラフガイドをご覧ください。
小規模なナレッジグラフの作り方
まずは、本当に答えを知りたい問いから始めましょう。「自分の知識をすべて整理する」では、達成できたかどうかを確かめるのが難しくなります。「このプロジェクトの参考になる文献はどれか?」なら、具体的な目標になります。
- 対象を絞ります。 読書リストかプロジェクトを1つ使います。最初のバージョンには、関係のない資料を含めないようにします。
- エンティティの種類に名前を付けます。 この例では、プロジェクト、読書資料、トピックを使います。実際のエンティティごとに、個別のレコードまたはノートを作成します。
- 関係を定義します。
Reading → informs → ProjectとReading → discusses → Topicを試します。それぞれの定義を、平易な英語で書きます。 - プロパティは意図を持って追加します。 読書状況などの詳細は、読書資料に持たせます。複数の読書資料をつなぐ必要があるトピックは、独立したエンティティにします。
- エンティティの重複を解消します。 「庭の調査」と「園芸調査プロジェクト」が同じプロジェクトを指しているか判断します。名前が似ているというだけで、レコードを統合しないようにします。
- 背景情報を添えてつながりを追加します。 読書資料がプロジェクトに情報を提供する理由を記録します。重要な主張の根拠となる一節や出典は残しておきます。
- 元の問いを検証します。 プロジェクトを起点に、つながっている読書資料をたどり、それらのトピックを確認します。すべてのつながりを説明できますか?
- 広げる前に見直します。 曖昧な関係の名前を変更し、間違いを修正して、足りないリンクを追加します。別の有用な問いに答えるために必要になったら、グラフを広げます。
さらに資料を追加する前に、この簡潔なチェックリストで品質を確認しましょう。
- 各ノードは、明確に識別できる対象を表していますか?
- それぞれの関係を、意味の明確な文として読めますか?
- 同じような関係には、一貫した名前が付いていますか?
- 重要な主張の根拠を見つけられますか?
- つながりをたどることで、最初の問いへの答えが得られますか?
目指すのは、最も大きな図ではありません。理解でき、信頼でき、再利用できるつながりの集まりです。
よくある質問
ナレッジグラフとは、簡単に言うと何ですか?
ナレッジグラフは、物事とそれらの間の関係を表す方法です。物事はノードになり、関係は名前の付いたリンクになります。たとえば、マヤは『フィールドノート』を書きました。そして『フィールドノート』は都市での園芸について論じています。
ナレッジグラフとグラフデータベースの違いは何ですか?
ナレッジグラフは、知識を相互につながった形で表現したもので、個々の対象や対象間の関係が持つ意味も含みます。グラフデータベースは、つながりのあるデータを保存し、検索するために設計されたストレージ技術です。グラフデータベースはナレッジグラフを支える基盤になり得ますが、両者は同じものではありません。
マインドマップはナレッジグラフですか?
一般的なマインドマップは、中心となるテーマから枝分かれする形でアイデアを整理します。ナレッジグラフは、事物間の名前の付いた関係を重視し、異なる枝に属する事物どうしもつなぐことができます。マインドマップはモデルの大枠を描くのに役立ちますが、枝分かれした図だけでは、つながりの意味は定義されません。
NotionやObsidianで個人用のナレッジグラフを作れますか?
はい。Notionのページはノードとなり、メンション、バックリンク、データベース間のリレーション、親ページとの関係を通じてつながります。Obsidianのノートはウィキリンクでつながります。エンティティの名前を統一し、関係の意味を明確にすることで、リンクされたノートを個人用のナレッジグラフとしてより有効に活用できます。
ナレッジグラフにAIは必要ですか?
いいえ。エンティティやエンティティ間の関係は手動で作成できます。AIはテキストからそれらを抽出する手助けになり、ナレッジグラフはAIシステムに構造化されたコンテキストを提供できますが、小規模なグラフを作り始めるのに、どちらも必須ではありません。